「鉄拳7」のプロライセンス保持者1)1JeSU(一般社団法人日本eスポーツ協会)が発行する「ジャパン・eスポーツ・プロライセンス」保持者。闘会議2018にて行われたトーナメントの上位4名と、メーカー推薦にてライセンスが発行された4名。参考URL:http://www.4gamer.net/games/322/G032250/20180213071/ http://www.4gamer.net/games/346/G034624/20180309126/による1DAYトーナメントである「鉄拳 プロチャンピオンシップ」が開催された。Twitchでウィナーズトーナメント、Youtubeでルーザーズトーナメントを配信しており、今回はTwitchで観戦した。
「対戦ゲームをプレイする様子を実況・解説付きで放映するコンテンツ」としてのeSports実況において、本配信は極めて高いレベルで纏まっていた。しかしながら、一部の配信では視聴者に正しく伝わらなかったり、分かりにくかったりする点も存在する。現在発生しているeSports実況における問題点と、eSports実況としてどんな点が今回の配信は優れていたか、さらに今後eSpors実況はどう改善すればよいか本稿は考えてみる。
目次
eSports実況における問題点
こんにち、様々なゲームジャンルでeSportsの実況が行われている。一般的なeSports実況では、プレイヤーが見ている画面と観戦者専用に用意された画面を適宜切り替えながら、実況者と解説者が試合の状況を伝える。「ゲームプレイを他者へ伝える」という点について、一部のeSports実況は以下のような問題があると考えている。
状況がわかりにくい
どちらが優勢でどちらが劣勢なのかわからなくなるケースが度々見受けられる。また、連携やコンボ等をあえてやめたのか、失敗したのかが実況しきれておらず、プレイヤーの意図が画面と実況から効果的に伝わっていない。
何がすごいのかわからない
プロ(またはそれに準ずる人)の試合を観戦するのだから、レベルの高いプレイを見て楽しみたいという意図があって配信を見るのだが、何がすごいのか分からないというケースがある。実況解説のテンション等から推測することは可能だが、「なぜそうなって」「何がすごい」という点を配信者側が伝えきれていない事が多い。
実況解説のゲーム知識が不足
実況解説のゲームに関する知識が不足している。実況の隣で騒ぐ知名度だけで呼んだ解説者が、状況を解説しない、というケースも散見される。実況者の知識が不十分であるために、配信を見ている側まで伝えきれていない場合がある。さらに、実況解説陣が選手達のゲームプレイを純粋に楽しんでしまい、配信そっちのけになってしまうようなケースも一部の配信で見受けられた。
どこが優れていたのか
それでは「鉄拳 プロチャンピオンシップ」の配信は他のeSports実況と比べてどのような点が優れていたのだろうか。以下の3点が挙げられる。
画面を全員で共有
はじめに、ゲームの画面をプレイヤーと視聴者が共有できていた点である。これは格闘ゲームというゲームジャンルのメリットでもある。各プレイヤーが使用するディスプレイが異なっていたとしても、そこに表示される映像は同一であるため、視聴者の知識レベルに関係なく同じ画面から同じ情報を得ることができる2)ただし、それを理解できるかどうかはゲームに関する知識や経験に依存する。。また、ゲーム画面の切り替えが配信者主導で行われないため、特定のポイントを見逃してしまうという事態も発生しない。
実況解説のレベルが高い
続いて、実況解説陣のゲームに関する知識が極めて高いレベルであった点が挙げられる。試合中の各状況に応じて、何が起こったのか、プレイヤーは何を目指してその行動を行い、上手くいった(いかなかったのか)を実況解説陣は適切に視聴者へ伝えていた。
具体的な例として、実況と解説が同時に「上手い!」と発言するケースが度々あった。これは、各プレイヤーの何が優れているかというのを実況解説が知識として共有できており、それが高いレベルでまとまっているためであると考えている。さらに、どのような点がプレイとして素晴らしかったのかをすぐに解説している点も、視聴者にわかりやすく伝えようとしている点が伺えた。
今回特にそれを意識していたのか、普段からそうしているかまでは分からなかったが、「なぜそれが行われたのか」と、「結果として何がすごかったのか」という点を伝えることに今回の実況解説は注力しているように感じた。
初心者向け施策
最後に、実況解説以外における分かりやすさを伝える施策として、配信画面下部に専門用語の解説を表示する欄を設けていたという点がある。この欄に簡単な専門用語の解説を表示しておくことにより、格闘ゲームに詳しくない視聴者に対して専門用語の内容が理解できるよう働きかけていた。
他ジャンルが改善するとしたら
以上の点を踏まえて、どのような点を改善したら今後のeSports配信はより視聴者に伝わりやすくなるか、筆者なりの考えは以下のとおりである3)他ジャンルでも効果的に視聴者へ伝えることが出来ている配信があれば、コメント等で教えてください。。
何がすごいのかを分かりやすく伝える
実況解説に関する改善案として、正しい知識をもった実況者と解説者を起用する点を挙げる。ゲームの楽しさや、プロのプレイの奥深さを伝えるには、正しい知識を持った実況と解説者を起用することが重要である。加えて、視聴者に分かりやすく状況を伝えるためのスキルも要求されるが、これは他のスポーツ実況と同様である。
プレイヤーを画面に表示する
ゲーム画面と同様に、各プレイヤーの様子を画面内に表示する。各プレイヤーの感情の変化等がわかりやすくなり、より贔屓の選手に感情移入しやすくなる。同ゲームにおける過去の大会配信や、他ジャンルのゲーム配信で既に採用されているケースもある。
如何に「分かりやすく」伝えるか
全く予備情報がない状態で観戦すると分かりづらいというのは、eSportsに限らず他のスポーツでも同様である。今回の「鉄拳 プロチャンピオンシップ」では以下の点で視聴者に分かりやすく伝えようとしている点が見受けられた。
- 全員同じ画面を共有(ジャンルとしてのメリット)
- 正しい知識や実況スキルで「なぜすごいのか」を分かりやすく
- 初心者や知識が不足している視聴者への配慮
他の格闘ゲームはもちろん、他のジャンルのゲームにおいても、同様の点に留意して配信を行い、「プロがやっていることが如何にすごいか」という点を効果的に伝えることができれば、今後よりeSports配信が普及してくのではないかと考えている4)配信からグッズ購入やゲーム内アイテム購入等、マネタイズの仕組みができあがれば、開催者側のインセンティブになるかもしれないですね。。
注釈
1. | ↑ | 1JeSU(一般社団法人日本eスポーツ協会)が発行する「ジャパン・eスポーツ・プロライセンス」保持者。闘会議2018にて行われたトーナメントの上位4名と、メーカー推薦にてライセンスが発行された4名。参考URL:http://www.4gamer.net/games/322/G032250/20180213071/ http://www.4gamer.net/games/346/G034624/20180309126/ |
2. | ↑ | ただし、それを理解できるかどうかはゲームに関する知識や経験に依存する。 |
3. | ↑ | 他ジャンルでも効果的に視聴者へ伝えることが出来ている配信があれば、コメント等で教えてください。 |
4. | ↑ | 配信からグッズ購入やゲーム内アイテム購入等、マネタイズの仕組みができあがれば、開催者側のインセンティブになるかもしれないですね。 |