廃墟には一定の需要がある。廃墟写真集も多数出版されており、廃墟愛好家達は写真集を見たり、実際に廃墟へ足を運んでみたりして廃墟を楽しんでいる。半壊した建造物の内部を実際に散策することによって、廃墟が醸し出す物寂しさや不気味さ等に廃墟愛好家達は様々な思いを巡らせる。今回紹介するのは、そんな廃墟愛好家じゃなくても楽しめる謎解き脱出ゲーム「Homesick」である。
あらすじ
ある日、男は廃墟で目を覚ます。手元には破れた絵が落ちていた。外を見ようとしたが眩しくて見ることができない。室内には張り紙や本があるが読むことができない。ベットからベランダ側を見てみると、破れた絵の状況とよく似ている。どうやら枯れた花を咲かせればいいようだ。
とりあえず外に出てみよう。ここでも日差しのきついところは眩しくて通ることができない。部屋の外には他にも多数の部屋がある。かなり大きい建物のようだ。一部の部屋には入れなかったが、他の部屋からバケツを調達し、水を用意することができた。部屋に帰り花に水を撒くと、枯れたと思っていた花が蘇った。部屋を舞う花びらを見ていたら、なんだか眠くなってきた。
謎を解いて施設から脱出しよう
「Homesick」は、アメリカのインディーデベロッパーであるLucky Pauseが開発した1人称視点謎解き廃墟脱出アドベンチャーゲームである。主人公が目覚めるところからスタートし、チュートリアルもないままゲームは進んでいく。
ゲームは、大きく昼パートと夜パートに分かれて進行していく。昼パートでは、夜パートへ移行するための条件を探索するのが主な目的となる。主人公は歩くことしかできず、日差しのきついところは眩しくて通過することができないため、薄暗いところを選択して探索する必要がある。施設内には有用そうなアイテムが落ちているので、アイテムと設置物を組み合わせながら夜パートへ移行できるようにしよう。
夜パートでは、次のエリアへ移動するための通り道を確保するのが目的となる。昼パートとは異なり、防火斧を装備し、周囲で人が話しているようなざわめきが聞こえ、地面からは真っ黒い何かが噴き出している。夜なので眩しくて通過できない箇所はないのだが、今度は真っ暗な箇所を通過することができなくなる。歩くスピードも昼より速くなっている。一箇所に留まり続けると、闇に飲み込まれて目が覚めてしまうので、迅速に次のエリアへの通り道を作る必要がある。次のエリアへの通り道を確保すると、目が覚めて昼パートへと移行する。これらを繰り返して、最終的に建物からの脱出を目指す形になる。
美しい廃墟と美しい音楽
Unrealengine3で描かれた廃墟は現行のゲームと引けを取らないリアルさで、窓から差し込む光や、室内を舞うホコリの描画がリアルな空気感を醸し出している。その中で奏でられるシンプルだが美しい音楽をバックに、廃墟の探索と謎解きの楽しさを満喫できるようになっている。
チュートリアルなどが全くないため、ゲームが始まった直後は何をしていいのか全くわからないが、周囲に落ちているものを調べてたり、周辺を探索するうちに段々何をすればいいかが分かってくるようになっている。本作においては、このような「事前に必要以上の情報を与えない。」スタイルはうまく機能しているように感じている。
探索においても工夫が見られる。調べられる箇所にレティクルが重なると形が変形し、調べたり閲覧できるということが分かるようになっており、探索して謎解きをすることに集中できるようになっている。(もちろん調査できるところ全てが謎解きに直結しているわけでもなさそうだが)
ボリュームと英語
ゲームとしてのボリュームは若干少ないように感じた。2~3時間程度でクリアできてしまうボリューであるため、謎解きゲームに慣れている人がプレイするともう少し早くクリアできてしまうかもしれない。
また、ゲーム自体がひとつの話として完結してしまっているので、再スタートすると前回と違う光景が広がっているというわけでもない。短いからあっという間に終わってしまうというわけでもなく、最後にはあっと驚く展開が待ち構えており、操作できる映画を見ているような気にさせてくれる。
謎解き要素についても、最後に変化をつけてくるが基本的に同じで単調である。各ステージの謎解きに変化があれば、探索する楽しみも増えたかもしれないが、やることが同じであるため周囲の景色を眺めてからやるべきことがある程度想像できてしまうという状態になった。
日本人向けに重要な要素として、本ゲームクリアにはある程度の英語の知識が必要であり、ゲームの作り上日本語化するのが非常に困難であるという点がある。簡単な単語が読めたり、文脈から重要な意味を推測できる程度の英語力で問題なく進めると思うが、施設の背景や経緯に関する書類が多数配置されており、それらの内容が理解できればよりゲームを楽しめるであろう。
雰囲気ゲーとしてはレベル高い
薄暗い廃墟が美しく作られており、こういう情景が好きな廃墟愛好家の方には文句なくおすすめできる作品となっている。しかしながら、ボリュームと価格がマッチしているかという点と、少々の英語力についてはよく考慮の上、セール時に購入等も検討していただければ良いと思われる。