【書評】「フランス人は10着しか服を持たない」は、フランス人が貧乏というわけではなかった。


成田空港の書店に平積みされており、中をパラパラと見るもその当時はかわなかったのですが、電子書籍で入手できるようになっていたので購入してみました。ページ数もさほど多くなく、サクっと読めますが、読了後、言いようのない違和感に全身が包まれたのでありました。

 

だいたいあってる

主人公(著者)は、アメリカのカリフォルニアに住んでいます。大学生の時に交換留学生としてフランスのパリへ行き、現地家庭で半年間過ごすことになりました。ホームステイ先は元貴族の家庭だったようで、格式高い家具に囲まれ、豪華なフランス料理(召使いではなくママが作る)を食べる伝統的でかしこまった暮らしに包まれていました。

そんなカリフォルニアとは全く異なる文化様式の中で半年間過ごした彼女は、ある日ワードローブの中に服が10着しか入っていないことに気が付きました!

「服が10着しかないのに、フランス人はこんなに素敵な暮らしができるのね!!私にもできるかも!!」

留学から帰ってきた彼女は、さっそく自宅のワードローブに入っている服を窓から放り投げ、服が10着しかない暮らしを手に入れたのでした。 -完-

 

全然違います。

 

いや10着以上持ってるし

本書のタイトルをおさらいしておきましょう。タイトルだけを読むと、フランス人の生活様式はどの様なものか非常に興味をそそられるものとなっています。

 

「フランス人は10着しか服を持たない」

 

ここで、電子書籍版P.70の興味深い記述を引用いたします。

 

10着といっても、ワードローブが文字通り10着しかないわけではない。

 

タイトルと本文で言っていることが真逆です。どういうことかというと、こういうことのようです。

  1. ワードローブにはその季節に対応できる服を10着程度用意する。
  2. ワードローブの中身は季節毎に見直す。(夏になればセーターをしまい、サマードレスをワードローブに入れる)
  3. 要らない服は躊躇なく捨てる。

つまり四季それぞれ10着服があれば合計40着ということになります。全然10着じゃないじゃん!!

 

生活様式の本

じゃあこの本はどういうことなんだというと、本書の原題を見ると明らかになってきます。本書の原題は「Lesson from madame Chic」であり、交換留学で行ったフランスにてフランス人元貴族の生活様式に触れることにより、いわゆるアメリカ式の文化に染まっていた著者が学んだフランス人の生活の知恵や、いつもと変わらないように見える生活を豊かで美しいものにするために、どのような生活を実践しているかについて語られた内容となっています。

想像ですが、翻訳の際に原題をそのまま訳すと本書の内容が分かりにくいので、もう少しインパクトがあり、本書の内容が想像できるようなタイトルにしようということだったのでしょうが、本文の内容と異なるクレームギリギリのタイトルになってしまいました。

ちなみに、前述した「ワードローブに10着だけ服を入れる」に関していうと、こういうメリットがあります。

  • 物欲が抑えられる
    どうせ10着しか服を着ないので、「着るかどうかわからないけど買おう」という状況を防ぐことができる。
  • 服の傷みに敏感になる
    着ている服の種類が限られるので、くたびれている服は目立つようになります。そういう服は躊躇なく捨てます。

 

どっちかというと女性向け(男性もいける)

著者が女性ということもあり、文章内における観点や、ワードローブの話等、どちらかというと女性向けの内容になっています。男性で季節毎に10着の服を持っているというのは、相当衣類にお金をかけている人という印象があります。女性は割と普通かもしれませんが。それ以外も料理の話や髪形の話等、女性向けの内容が多いです。

本書において興味深かったのは、彼女の考え方や行動パターンが日本人と似ている個所があるなぁという点でした。こんなところからも日本はアメリカの影響を大きくうけているのだなぁと感じつつ、ヨーロッパでの生活における基本的な考え方(フランスだけかもしれませんが)について詳しく語られています。ヨーロッパの文化はよくわかっていないということもあり、新鮮に読めました。

原則は「良いものを、長く使う」であり、「量より質」を追求する生活様式については参考になる部分も多くありました。

 

なお、第2弾が出版されているようです。「2015年 年間ベストセラー第1位(実用書・ノンフィクション部門)」らしいのですが、どこが出したランキングでしょうか?

 


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